ChatGPTに、教科書通りに経営できない悩みを相談してみた

ドラッガーのマネジメント

経営のセンスがあるわけじゃないからこそ、まずは教科書通りにやってみようと思う。でも実際には、それがなかなか難しい。

ここで言う「教科書」というのは、ドラッカーのような経営書や、実務のフレームワークを紹介しているようなビジネス書のことです。

以前に働いていた職場では、「教科書をしっかり理解して、それを実践に活かそう」という文化がありました。簡単そうに見えるのですが、なかなか実践を継続するのが難しいのです。

教科書となる本の内容をすぐに忘れてしまったり、日々の仕事の中で、場当たり的な判断をしてしまったり。「去年こうしたから」「あの会議で言われたし」みたいな、その場の空気に流されてしまうこともよくあります。

「あれ、教科書にはどう書いてあったっけ?」と思い出そうとしても、どこに書いてあったかすぐに見つからない。本をめくってるうちに時間がなくなって、結局なにもできずに終わってしまうことも。

そこでふと思ったのが、「こういうときこそ、ChatGPTに相談するのがいいのでは」ということでした。

ChatGPTを経営の相談相手にしてみた

困った時のドラッガーさんということで、ドラッガーさんの本を教科書にして相談してみました。ドラッカーさんの本は多く、英語であれば記事も多い。きっとChatGPTも多くの文献をもとに学んでいるので、うまく使えば実務に落とし込むサポートになるかもしれない。

試しに、こんな質問を投げかけてみました。

ChatGPTへの質問文(プロンプト)
「新たにセミナー事業を始める予定です。ドラッカーの考え方をベースに、事業の目的を整理したいです。
ドラッカーが事業の目的を決める際に、どんな問いを立てているか、具体的な問いをあげてください。問いを挙げる際は、ドラッカーの書籍から具体的に根拠となる参照箇所を提示してください。」

すると、ChatGPTからは「こんな問いを立てると良い」といったアドバイスが返ってきました。

ChatGPTからの提案

以下に、ピーター・ドラッカーが事業の目的を考える際に立てる代表的な問いを、具体的な書籍と参照箇所をもとにまとめます。ドラッカーの思想は一貫しており、特に以下の3冊に事業目的に関する記述が多く見られます。

【1】問い:「われわれの事業は何か (What is our business?)」
参照:『マネジメント – 基本と原則』(原題:Management: Tasks, Responsibilities, Practices)、1973年、第6章「事業の定義」
説明:この問いは、ドラッカーのマネジメント論において最も基本的な問いです。彼は、企業は自己定義を誤ることで衰退すると警告しています。この問いを考える際には、次のような補助的な問いが重要になります:

  • われわれの顧客は誰か?
  • 顧客にとっての価値は何か?
  • 顧客が買っていると認識しているものは何か?
    ドラッカーは、事業を定義する際には「外から見る」こと、すなわち顧客視点に立つことの重要性を説いています。

【2】問い:「顧客にとっての価値は何か (What is value to the customer?)」
参照:『マネジメント – 基本と原則』第6章、および『経営者の条件』(原題:The Effective Executive)、1966年、第2章
説明:事業の目的は「顧客の創造」であるとドラッカーは定義しています(これは『マネジメント』冒頭に記載)。そのため、顧客が何を価値と感じるかを理解することが、あらゆる事業活動の出発点になります。顧客にとっての価値は、価格だけでなく、品質、使いやすさ、信頼、サービスなど多様です

以下、省略


問いの意味がわからなければ、追加で聞いたり。関連する本の名前を教えてもらって、そこから読んで深掘りすることもできます。

顧客のイメージはあったのですが、提供する価値が偏っていないか心配になり、改めて整理したいなと思い、追加で聞いたのが、

ChatGPTへの質問文(プロンプト)2回目
顧客にとっての価値を整理するために、どんなことをしたら良いか。

返ってきたのがこんな返答でした。

顧客にとっての価値(What is value to the customer?)を整理するためには、ドラッカーの考え方に基づき、以下のようなステップと観点を用いることが効果的です。ドラッカーは「顧客の価値は顧客自身しか定義できない」と繰り返し述べており、自社の視点ではなく顧客の視点から徹底的に掘り下げることを求めています。

1.顧客への直接インタビュー・観察
目的: 顧客が何に価値を感じているかを、言葉や行動を通じて把握する。
具体的手法:顧客へのインタビュー(例:「なぜこのセミナーに参加したのか?」「どの部分が役に立ったか?」)行動観察(どこで反応していたか、どの資料を繰り返し見ていたか)

フィードバック・アンケート(自由記述を重視)
参考: ドラッカーは『非営利組織の経営』(1990年)で「顧客に聞け」と明言しています。自分の思い込みで顧客ニーズを定義してはいけない、と強く警告しています。

以下、省略

自分で文献を探して「これかな?」と試行錯誤するより、スピーディーに進められました。


教科書だけでは動けないとき、ChatGPTが助けになることもある

知識がまだあやふやなときでも、ChatGPTに相談しながら進めれば、必要な問いや参考文献を教えてくれて、次にやるべきことが見えてきます。

本来なら、きちんと勉強してから取り組むべきなんだと思います。「教科書には何て書いてあったっけ」と思い出しながら進めるのは、少し邪道かもしれません。でも、「完璧に理解してから始める」って、現実にはなかなか難しいものです。

だからこそ、理解が不十分なままでも、小さく動きながら考えたいとき。この方法は、ひとつの助けになるかもしれません。

もちろん、ドラッカーのように情報が豊富な人物であればうまくいきますが、知見があまり公開されていない人については、精度に限界もあります。その点は注意が必要です。

それでも、「教科書通りに経営するのは難しい」と感じている方にとって、ChatGPTは新しいヒントを得る手段として、十分に活用できると思います。私自身、まだまだ試行錯誤の途中ですが、迷ったときの相談相手として、これからも頼っていくつもりです。

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